膏肓穴は、心包経の背部兪穴である厥陰兪穴と並び、膀胱経の2行線にあるツボで心包の病変が現れるツボです。
治療では、心包の弱りを診ることで、そこから心の病変の有無も考えていくことが大切です。
心を包むと書きますので、生命の中枢部となる心臓に邪気が入らないように、
防衛隊のように心を守っているのが心包なのです。
その昔、漢方の世界では、「病膏肓に入る」という言葉があり、
このツボが邪気に侵されてしまっている反応が診られたら、
寿命が訪れるのも近いと考えてました。
現代と違い、車や新幹線などがない時代ですから、遠方から病人の家族が駆けつけるまでには、
数日から1週間はかかったでしょう。
そこで漢方医は、病気の治療ではなく、家族が到着するであろう期間までの、
延命的な方剤に変えて処方を行っていたといわれています。
現代風にいえば、心臓が病に侵されて危ない状態ということになりますね。
狭心症や心筋梗塞などの病気でも、
今は医療が発達していますから、症状の度合いにもよりますが、
諸々の処置がなされて、命は助かることも多くあると思います。
我々の治療現場では、
膏肓穴が虚のコリとなって、症状を改善するのに一番の治療穴となることがあります。
頑固な肩こりや頭痛、心、心包の弱り、循環器系の疾患をお持ちの方、
精神疾患、強いストレスなどの症状が挙げられます。
膏肓の正穴の位置も含めて、
その周囲に注意深く切経や調摩を行い、硬結を探していきます。
肩甲骨内縁の筋肉やツボは、
肩こりがあったり姿勢の悪い方などでは、
筋緊張が強く、ツボの圧痛反応もよく診られますが、
“あきらかに他とは違う異質な硬さのコリ”を見つけます。
これが膏肓です!
このツボに安定持続圧を行うと、
肩上部や肩関節部、胸部などによく響きが起こります。
敏感な患者さんでは、
「心臓に響く」
「胸まで圧が貫通する」
などと表現される方もいます。
垂直圧となるために、
上部胸椎の後彎度合いや胸郭の丸み、コリと肋骨との位置関係なども考慮してベクトルを定めていきます。
硬さが強いため、防御性筋収縮が起こりツボが閉じないように、
柔らかいタッチで拇指を当て、圧だけ浸透させていくような漸増圧が求められます。
軽い圧での揉捏法で、患者さんを気持ちよくリラックスさせたり、
緩圧法を用いて、段階的に圧を深く入れていくのも良いと思います。
心臓に持病をお持ちの方や、
伏臥位での胸部の圧迫感が苦手な患者さんに対しては、
側臥位で施術を行うと良いですね。
トリガーポイント療法でも、膏肓穴と思われる筋硬結は僧帽筋第3TPとなり、
関連痛のドミノ倒し現状を考えると、
このTPが、様々な症状の責任トリガーポイントになっていることもよくあります。
また、
潜在性トリガーポイントのうちに、指圧療法により活性化を防いでおくことが、
様々な症状の「未病治」として大切ですね。
経絡治療での膏肓穴。
トリガーポイント療法の僧帽筋第3TP。
このツボからの響きは、首肩コリをはじめとした頭顔面部の症状や、
上焦の病変に対する治療効果を高めます。
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